医師から告げられる治療方針に、嫌でも高まる不安。
前日に、全ての検査結果で『異状なし』という報告を受けた私は、気分良く病院へと向かい、病室で奥ちゃんとその喜びを分かち合いました。
その日、治療をどうするかというお話を医師から聞くわけですが、検査の結果が良好だったことで頭がいっぱいだった私は医師からの話を聞き一気に不安を抱えるわけです。
きっと、同じような経験をしたことがある人、今まさにこのような経験をしている人もいることでしょう。
愛する我が子に何かが起こった場合、親は自分が医者でもない限りは、そばにいて子どもを安心させることくらいしかできません。
しかし、それが一番大切なことなのかもしれない。
こんな時、なんで?どうして?と親は苦しみ、考えることはほとんどが悪い想像です。
それでも、子どもは笑います。
その笑顔は、きっと親が与えた安心感から生まれているものだと私は思っています。
どうか、その笑顔を絶やさないようにそばにいて、『大丈夫だよ』と安心を与え続けてください。
それでは前回の続きです。
Contents
医師から告げられた治療方法は…?
こんな小さい赤ちゃんが耐えられるのか?率直にそう思った。
まずは、私に再度検査の結果が告げられ、親子共によく頑張ってくれましたという労いの一言。
そして、次のステップのお話をしました。
やはり、最終的な判断は組織を採取しての診断が必要であるということ。
ただ、部分的に取るということではなく、採取のためにメスを入れるとはいうものの、どうせなら可能な限り全摘出を試みるということも告げられました。
治療は『開頭手術』ということです。
生後4カ月の赤ちゃんが、頭にメスを入れる。
背中がザワッとしました。『耐えられるのか…?大丈夫なのかな?』と増していく不安。
手術の説明としては…
【手術の方法とその特徴】
腫瘤に沿って線状の皮下切開を行い皮下腫瘤を摘出。 発生母地と考えられる頭蓋骨も可能な限り摘出を試みるが、硬膜の中へ侵入して脳へ達していた場合は全摘出はせずに一旦終了する。 全摘出できたと判断できた際には頭蓋骨欠損部を吸収性素材を用いて形成する
というものでした。
幾度となく同じような手術を執刀してきた経験豊富な医師が手術を担当するということや、手術は全身麻酔で行われること、起こりうる合併症の説明等もしっかりしてくれました。
よほどのイレギュラーがない限り、難しい手術ではなく時間も2時間程度で終わるとのこと。
それでも『2時間もかかるのか』と思ってしまうのが親。
不安になっても仕方ないし、主治医や執刀医のことを信頼してお任せするしかないということはわかっているものの、やっぱりなにかと不安ですよね。
手術は10日後。
色々な同意書や書類にサインをして、その日は終了。
仕事がある私は、奥ちゃんと娘を残して一旦地元へ帰るのでした。
いよいよ手術。きっと忘れることのない1日。
大丈夫。何度も心に言い聞かせ、手術室へ向かう。
手術当日。
朝早く(8時20分)に手術が行われるということもあり、朝から夫婦2人で緊張していたことを覚えています。
『そろそろ行きましょうか。』という看護師さんの一言。
奥ちゃんが娘を抱っこして家族3人は手術室へと向かいました。
手術室にはすでに多くの患者や家族がいて、『こんなに手術する人がいるのか。』と驚きました。
さすがは大病院といったところでしょうか。
そして…。
手術の助手の看護師さんを紹介され、娘を託す時がやってきたのです。なぜかその瞬間はゆっくりとスローモーションのように見えた気がしました。
娘が奥ちゃんの手から、看護師さんへ。
『お願いします…。』
娘はというと、さすがに何もわからずといった感じ(何も知らなくて良かったのかもしれないが。)で、ごく普通に看護師さんに抱っこされているように見えました。
奥ちゃんはやはり、これから我が子に起こることに親としての責任を感じているようで…泣いていました。
私は、おそらく時間にしたら10秒くらいのこのワンシーンを一生忘れることはないでしょう。
2時間という手術を待つ間に話したことや、自分が何をしていたかなんてハッキリ言ってもう覚えていません。
しかし、この10秒間は今でも鮮明に覚えています。
そして、親2人は病室で手術が終わるのを待ったのです。
手術は無事成功。よく頑張った。
覚えているのは『人生で最も長い2時間だった』ということだけ。
手術が終わったことを告げられ、娘はもうすぐ病室に戻ってくるとのこと。
『大丈夫だったかな。痛い思いをしなかったかな。』という心配と、『早く顔を見たい。』という感情と『検査結果はいつわかるんだろう。』という疑問などがごちゃごちゃになって頭の中を回っていました。
そして、遂に親子再会の時。(大袈裟。ww)
病室に戻ってきたのは昼を少し過ぎてからでした。
泣きながら帰ってくるかなと思っていたのですが、麻酔がまだ効いていて眠っている状態で戻ってきた娘。
当たり前ですが頭には包帯が巻かれ、何とも痛々しい姿でしたね。
『痛かったね。ごめん。よく頑張ったね。』と声をかけながら、顔や手足をさすり、娘の体温を感じて。
『無事終わったんだな。』と改めて思いました。
少ししてから、執刀医が手術の説明のため病室へ。
一通りの説明の後に、『生検の結果はまだ出ませんが、腫瘍を取った時の感触、取れ方など、過去のランゲルハンス細胞組織球症の手術と類似していると感じました。おそらくそうだと思います。』
私はなぜか不思議とあの時、『そうか。』くらいの感情にしかならなかったんです。
今はただ頑張った娘を褒めてあげたい、早く笑っている顔を見たい。
言葉は理解できなくても、いっぱいいっぱい話しかけてあげたい。
そんな風に考えていた気がします。
奥ちゃんもきっと同じようなことを思っていたでしょうね。
そうこうしていると、娘が少しずつ動き始め、目が開くようになってきました…が、まだ麻酔で朦朧としているようで少し目が開いてもまた眠ってしまう。
よく考えれば、生後4カ月の赤ちゃんが全身麻酔で開頭手術をしたわけですから、その体力の消耗は半端なものではないでしょう。
『ちゃんと起きるまで、今はゆっくり寝てもらおう。少しでも長く休んでもらおう。』
そう決めました。
本当に本当に本当に、よく頑張ってくれました。お疲れ様☆
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回は生検の検査結果のお話です。