生きてさえいれば、楽しいことは沢山ある。その一つ一つを楽しみにしたい。

普通に起きて、普通にご飯を食べ、普通に遊び、普通に寝る。
この『普通に過ごす』、『普通に生きられる』というがどれだけ素晴らしいことなのかを真剣に考えたことがあるという人は、きっと自分自身や大切な人に何かがあったという経験がある人でしょう。

そんな時、いきなり『まぁ、いっか』と開き直れる人は少なく、ほとんどの人がまずは落ち込みますよね。
私もそんな1人でした。


娘の頭に腫瘍が見つかり、それは難病(ランゲルハンス細胞組織球症)の疑い。
多数の検査を経て、生後4か月での開頭手術。

『この子はきっと普通に生きることは難しく、この病気と付き合っていかなきゃならないんだな。』
と思っていました。

でも…。
そうだとしても、『楽しいことも沢山あるんだから、それを大切にして生きていきたい。』

一旦落ちてしまった後は、必ず上を向く瞬間があります。
生まれたばかりの我が子が、一生懸命に生きようとしているのに、親が今にも死にそうなくらい落ち込んでいたらやっぱりダメですよね。

今回は…麻酔から目覚めた娘。
そして、執刀医にも『おそらくそれ(ランゲルハンス細胞組織球症)でしょう。』と言われた腫瘍の検査結果のお話です。

よく頑張ったね。お疲れ様。                         

難病の気配など微塵も感じさせない。頭の包帯以外は。

手術を終えて、どれくらい経ったでしょうか。
麻酔の余韻か、手術で相当体力を消耗したせいか、少し目が開いてはまた寝るということを繰り返し、ようやく覚醒した娘。

『痛かったね。。よく頑張った。ホントにお疲れ様。』

そう声をかけながら、手をさすったり、お腹を撫でてみたり。
いつもと変わらない娘からは全く病気の気配は感じませんでした。

ただ、柵(転落防止)付きのベッドに寝ているごく普通の赤ちゃんであり、なにかおかしなところがあるわけでもなく、『ホントにこの子は病気なのか?』と思うくらいでした。
手術を受けたため、頭には包帯が巻かれてはいますが…この子に何か病気的な要素があるとするならばその包帯だけ。

術後の経過も良好で、元気な姿を見ると嬉しくなる反面、頭に浮かぶのはやはり病気のこと。
ちょっとした娘の仕草にこっちも笑顔になりながら、心の中では病気の悪い想像をして、心と体がアンバランスな状態で複雑な気持ちになっていたことを覚えています。

術後の後遺症などの心配もないとの判断が下されたことにホッと一安心。
検査結果はすぐには出ないということで、私はまた1人250キロほど離れた自宅までの帰路につくのでした。

遂に診断が下される。驚愕の検査結果とは!?

予想外の診断結果に、最初は全く理解ができなかった。

5月に入り、『検査結果が出ました』という報告を受けた私は、病院へと向かいました。
この短期間で何度も何度も往復した道。

本当にいろんなことを考えながらハンドルを握っていました。
ある日突然娘の頭の異変に気付き、行った病院で難病の疑いと言われ、大きな病院で多数の検査を受け、結果は他に異常はなく、生検のため開頭手術を行い、そしてついに最終診断を聞かされる時が来たわけです。                  

これは全て1ヵ月程度の間に起こったことなので、過ぎてしまえばあっという間のできごとという感じでした。
そしてもうこの時は、病気であることを受け入れる覚悟もできていたように思います。

メインで考えていたことは”今後の生活はどうなっていくだろう”ということ。
この時は悪いことばかりではなく、前向きなことも十分に考えることができていましたね。

病院に着いてからも、元気になった娘と、疲れ気味の奥ちゃんに会えたことに素直に喜ぶことができましたし、ある程度の覚悟をもつことができていたことで、どこか心にも余裕ができていたのでしょう。
なので、医師の話もほんの少しの緊張感を持っていたくらいで、落ち着いて聞くことができましたね。

そして、医師からの説明を聞く時が来たわけです。

↓↓驚きの結果は以下↓↓

医→『生検の結果なんですが…』
  『ランゲルハンス細胞組織球症……ではなく悪性のものでもありませんでした。』

私→『はい…??(ん?どういうこと??)』
  『じゃあ、何だったんでしょうか??』
  ※全く想定外の話だったため、この時が一番動揺していたかもしれません。

医→『繊維種と思われます。』

私→『はぁ。(奥ちゃんを見て)喜んでいいのかどうなのかわからないね。』
奥→『うん…。』

医→『いやいや!喜んでいいんですよ!!良性の繊維種ですから!!手術で摘出したのでこれで終わりです!!』


私&奥→『…。(なぜかよくわかっていない。)良性…??』

医『そうです。難病でも悪性の腫瘍でもなく、ただの良性の繊維種です。』

私→『ほ、本当ですか!?(ようやく理解し始める。)』
奥→『……!(言葉にならない。)』

医→『本当です。よかったですね!』

私&奥→『あ……ありがとうございます!!!』

そうです。
奇跡が起きた瞬間です。

ランゲルハンス細胞組織球症の患者さんの、手術を何度も経験したことのある執刀医ですら、『腫瘍の取れ方や、手術の感触的にもおそらくそれ(ランゲルハンス細胞組織球症)でしょう。』
と言っていたのに、娘の側頭骨にできた腫瘍は……

ただの良性の繊維種。

飛び上がって叫んで喜びたかったくらい、気持ちが高揚していました。
『この子は、心配なく生きていける!』

こんなことがあるのかと、しばらく興奮がおさまることはありませんでした。
そして、同時に医師から退院の日程についてのお話があり、退院という言葉を聞いて『あぁ、本当に無事に終わることができたんだな。』と実感することができたわけです。

良性の可能性を考えなかったのかと言えば、『奇跡が起こればそういうこともあるかも』くらいには考えていました。でも、99%以上はランゲルハンス細胞組織球症だろうと思っていたのです。

それは、素人の私ですら娘の症状をみて、早いの段階でその可能性に行き着いたこと。
最初の病院でその可能性通りの疑いを指摘されたこと。
各種検査では異常は出なかったが、ランゲルハンス細胞組織球症には単一臓器型という分類があること。
手術の執刀医も過去の経験からおそらくそれだろうと言ったこと。

これらのことから、ほぼ間違いなくそうなんだろうと思ってしまっていました。
でも違った。

奇跡が起これば…なんて思いながら、奇跡なんて起こるわけがないと半ば諦めていた。
そんな私達には奇跡が起こりました。

辛い検査に耐え、生後4カ月で開頭手術という苦痛に耐えた娘の頑張り、そしてずっと隣で娘を支え続けてくれた奥ちゃんの頑張りが、祈りが起こしたんだと本当に今でも思っています。

本当に本当に本当にお疲れ様。
娘のために尽くしてくれた、病院関係者の方々にも深く感謝しています。

退院の日。
久しぶりに家族3人で車に乗り、嬉しい気持ちいっぱいで家へと帰ることができました。

ここまで読んでくれてありがとうございます!
次回からは、お話が変わります。